

小学校では今春2011年4月から、中学校では来春から、文部科学省の「新学習指導要領」が全面実施されます。「『ゆとり教育』の見直しと学力の向上」が目標として掲げられています。
1980年から実施されたこの『ゆとり教育』は、それまでの指導要領よりも、学習内容が軽減されたものでした。今回、40年ぶりに学習量が増加され、小学校・中学校の教育内容に大きな変化が起こります。
この、大きな転換期を目前にした2011年の中学入試ですが、さまざまな変化が目立ちました。
2010年には早稲田大学高等学院と中央大学附属という、有名大学の附属校が同時に中学校を新設し、大きな反響がありました。また、2005年から2010年にかけては、東京・神奈川・埼玉・千葉に公立の中高一貫校が17校開校しました。東京都の公立中高一貫校の設置計画は、これでひとまず終了したことになります。
このように、公立校でも私立校でも積極的・意欲的な教育改革や、入試改革が行われています。それは少子化を迎えた今日、各学校間での生徒の争奪戦が激しさを増し、公立校と私立校の間でも、私立校と私立校の間でもそのボルテージは上がってきているからです。
保護者の方も、大学合格実績のあるよりレベルの高い確実な教育が受けられる学校を選択しようとしています。このように変化する教育環境のもと、ますます中学入試が注目されてきているわけです。
<表1>2011年入試2月1日出願状況による受験者数(推定)
| 出 願 者 数(人) | |||||||
| 2011年 | 2010年 | 2009年 | |||||
| 東 京 |
男子校 | 12,488 | (1,791) | 12,865 | (1,649) | 13,202 | (1,606) |
| 女子校 | 16,933 | (4,674) | 17,990 | (4,751) | 18,573 | (4,548) | |
| 共学校 | 17,925 | (6,451) | 18,042 | (6,350) | 18,390 | (6,111) | |
| 計 | 47,406 | (12,916) | 48,897 | (12,750) | 50,165 | (12,265) | |
| 神 奈 川 |
男子校 | 2,374 | (250) | 2,486 | (323) | 2,795 | (341) |
| 女子校 | 4,873 | (1,129) | 5,652 | (1,616) | 5,077 | (1,589) | |
| 共学校 | 6,305 | (1,545) | 5,963 | (1,081) | 5,845 | (936) | |
| 計 | 13,552 | (2,924) | 14,101 | (3,020) | 13,717 | (2,866) | |
| 推定出願者数 | 60,958 | (15,840) | 62,998 | (15,770) | 63,882 | (15,131) | |
| 推定総受験者数 | 45,600 | 46,500 | 49,000 | ||||
| ※( )内は午後入試校の推定受験者数 ※東京の2/1入試の公立中高一貫校は含まない |
※「首都圏中学模試センター」集計 |
次に、2011年の首都圏中学入試の全体をデータから見てみましょう。

| ※「首都圏中学模試センター」集計 |
<表2>一人当たりの平均出願校数
| 総受験者数 (人) |
延べ出願者数 (人) |
1人平均 受験校数 (校) |
|
| 2009年 | 49,000 | 321,201 | 6.56 |
| 2010年 | 46,500 | 305,020 | 6.56 |
| 2011年 | 45,600 | 302,092 | 6.62 |
| ※東京・神奈川・埼玉・千葉の公立中高一貫校は含まない。 |
| ※「首都圏中学模試センター」集計 |
1. 「受験者総数」は微減
首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県)の推定の総受験者数は、約4万5,600人で、前年の同4万6,500人に比べて900人、率にして1.9%減でした。入試前には、秋の大手の公開模試などの参加者数から、大幅な受験者数の減少が予測されましたが、ふたを開けてみるとその減少幅は小さく、私立中高一貫校人気は相変わらず根強いことが分かりました(表1)。
首都圏の総受験者数は、2月1日入試の出願者総数6万958人(前年比3.2%減)から、午後入試の受験者1万5,840人(東京・神奈川)を差し引き、埼玉県、千葉県だけの受験生の推定値を加算して4万5,600人を算出します。
2011年の東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の小学校卒業生数は約30万6,750人ですから、「総受験者数÷卒業生数」でこの「受験率」を算出すると14.87%になり、前年比0.45%減と小幅な減少に留まり、ほぼ例年並みの厳しい入試が繰り広げられたということになります。 受験率は2008年の16.57%をピークに3年連続でダウンしています。それでも6.7人に1人が中学受験にチャレンジするという高いレベルの受験率が、ここ数年続いています。
2. 一人当たりの「併願校数」は増加
中学受験は大学受験と同様に複数校に出願して、合格作戦を組み立てていきます。 また、その志望する中学校が自由に選べるのも中学受験のひとつの特徴です。保護者のそれぞれの教育イメージで、わが子にとってよりよい教育を目指して、併願パターンを作り上げることが出来るのも、中学入試の醍醐味といってよいでしょう。
2011年入試の延べ出願者総数は約30万2,100人で、一人当たりの平均併願校数は6.62校と増加していました(表2)
3. 午後入試の受験者数が増加
表1で午後入試の受験者数を見ると、昨年より若干増加しています。そのために平均併願校数がアップしたのです。3年前から、この午後入試の受験者数が増加してきています。その理由は、複数回の入試を実施している中学校では、複数回受験する受験生を優遇するケースが多いのですが、2月1日~3日の間に同一の中学校を複数回受験しようとすると、他の中学校との併願が日程上難しくなってきます。そこで午後入試が利用されるようになってきたわけです。ちなみに、2月1日~3日までの間の延べ入試回数は1,005回で、そのうちの35.5%の357回が午後入試でした。つまり、3回に1回が午後入試だったのです。今や、午後入試が併願作戦に欠かせない入試制度のひとつになってきているわけです。
4. 平均「合格率」がアップして緩和された
合格率は、首都圏の国・私立中学校の「総募集定員数÷総受験者数」で算出されます。2011年入試では、募集定員数が前年比2,070人増えて約4万7,840人となって、受験者数を上回り、合格率は104.9%と100%の大台を超えました。つまり数字上は全入の入試になったわけです。
募集定員数が増加した理由は、2011年度に首都圏で千葉明徳、二松學舍大学附属柏(いずれも千葉)、開智未来(埼玉)の3校が中学校を開校したのをはじめ、海城、浦和明の星女子、東京純心女子、富士見などで高校募集を取りやめて中学入試の募集人数を増やしたためです。
男女別の合格率では、男子が93.1%(総定員2万1,279人、総受験者2万2,850人)、女子が116.7%(総定員2万6,559人、総受験者2万2,750人)という結果で、女子の合格率が目立ちますが、中堅校と難関校の入試は例年通りの厳しいものでした。
5. 「公立中高一貫校」の入試上昇
東京都の公立中高一貫校が、2005年から順次新設され、2010年で11校を数えるに至りました。同様に、神奈川県、埼玉県、千葉県でもそれぞれに2校ずつ誕生して教育活動を開始しています。
一般的に、公立の中高一貫校の新設当初は、爆発的人気で大勢の出願者数を集めて高倍率で推移しますが、年を経るごとに減少傾向をたどります。それは、入試検査が「適性検査」という対策の取りにくい記述式の解答で、しかも科目間の境界が分かりにくい総合的な出題であること、さらに、各校とも私立中に比べて高倍率であることなどからだんだんと敬遠されてきます。
ところが、2011年入試では、出願者数は約1万7,240人と前年比4.5%も増加していました。これは、公立中高一貫校への強い人気の表れと見てよいでしょう。 公立中高一貫校の受検者のうち、70%の生徒が公立中高一貫校のみを受検しているものと推定されます。公立中高一貫校のみを受検している生徒約1万2,050人を、国・私立中学校の受験者4万5,600人に加えると5万7,650人となり、首都圏の小学生の中学受験率は、約18.8%で5.3人に1人が受験していることになります。
2011年春、つまり今春には2005年に設立された都立第1号の白鴎高附から、2012年には2006年に設立された都立小石川、都立両国高附、都立桜修館、千代田区立九段の4校からそれぞれの1期生が卒業して大学を受験します。その合格実績が、今後の公立中高一貫校の人気動向に大きく影響することでしょう。

